<2・仲良く、落下。>

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<2・仲良く、落下。>

『破滅のセシリア』。  乙女ゲームでありながら展開がハード、恋愛フラグより死亡フラグの方が立ちまくるという、ある意味恐ろしいノベルゲームである。あまりにネットで話題になっているので試しにつみきも買ってみたところ、ゲームのえげつなさをもろに実感するに至っているのだった。  基本は小説を読みながら、無数に現れる選択肢を選んでいくことによって、キャラクターとの関係性が変化したり未来が変わったりすることを楽しむゲームである。操作するのは、伯爵家の養子であり元は孤児であり身分も低かった少女・セシリア。両親は厳しいものの、食べるものにも困るような生活をしていたセシリアを引き取り、血のつながった我が子も同然に大切に育ててくれている。だからこそ、セシリアにはいくつもお見合いの話が舞い込むのだ(ちなみにこれも、最初の選択肢次第では既に婚約者が決まっているというルートになる)。  優しい人々に囲まれて何不自由なく生活するセシリアは、その天真爛漫な性格もあって多くの人に愛されている。ただし、元は下層階級ということもあって一部のメイド達には“自分より低い身分のくせに”と冷たく当たられることもあるし、同じ伯爵家の悪役令嬢には無駄にライバル心を向けられていじめに近い扱いを受けることもあるのだが。 ――恋愛フラグは、男女問わず立つ。それこそ婚約者がいるのに別の男性に言い寄られて駆け落ちしてしまうルートもあるし、婚約者と大恋愛に発展して王道ルートに入ることもある。時には、通わせてもらっている高等学校の生徒達と恋愛・友愛フラグが立つ。……同性であるはずの悪役令嬢とも時には立つって凄いシステムだけど。  それだけ聴くなら、好きなキャラに対して好感度が上がる答えをしていけばいいだけの恋愛シミュレーションゲーに見えるだろう。  問題は、このゲームで立つ恋愛フラグよりも、死亡フラグのルートが圧倒的に多いということ。  実はセシリアの家は、大きな陰謀に巻き込まれつつある。この家の家長である父が運営する会社が、他国と戦争して大儲けしようとしている悪の一族の存在に気づいてしまうのだ。セシリアはそれに気づいて、父と協力して戦争を回避しようと果敢に調査を手伝う。この国では女性も跡継ぎ候補となる上、女性も男性とほぼ同じように仕事をすることが許されている。父も、セシリアの申し出があれば気前よく仕事を教えてくれるし手伝わせてもくれるのだが――。  それで首を突っ込みすぎたセシリアは、とある海軍大尉が一枚絡んでいることに気づき、首を突っ込みすぎてしまうのである。
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