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(頭に血が上って、瞬殺されるだなんて)
自分の戦いぶりに、後悔しかない。時間を巻き戻して試合をやり直したい。そのくらい、強く後悔している。
侍女たちに「ソフィア王女」として、身支度をされながら。
晩餐会は「体が痛くてどうも」と大嘘を言って逃れたというのに、何かとさばけた性格の父王にあっさりと宣言されてしまったのだ。「負けは負けだから。勝者と子作りするなりなんなり。すぐじゃなくてもいいけど計画はしっかり立てておくように。何しろこれはソフィアが決めた条件で、そのルールの中で勝者が出て、お前をもらいうける気満々のようだから。阻止できなかった時点で、もう諦めなさい」と。
(阻止しようとしていたのがバレていた上に、逃げ道を全部ふさがれている……)
「姫様、ずーっと麗しいお姿で過ごされてきましたけれど、そうして女性用の夜着をお召しになられたお姿も、たおやかで可憐でずっと見ていられます」
心酔したような侍女たちに言い寄られて「そ、そう?」と精一杯強がって笑い、なんとかやり過ごして部屋から出て行ってもらう。
普段は兵舎住まいで、用事のあるときだけ王宮の自室に戻っていたが、今日はまるで見慣れぬ場所に連れてこられたように落ち着かない。
急に戻ってきても、もちろん整えられているが、今日は一段と、部屋の装いが違ったせいだ。
どこもかしこも花が飾られている。それどころか、寝台など白薔薇で埋め尽くされていて(どこで寝るの?)状態。
「白薔薇騎士団だから白薔薇の君なんて言われていますけど、べつに私自身、白薔薇に埋まりたいほど好きというわけでは……」
むしろ好きなのは青薔薇の方。
そこまで頭の中で思い浮かべて、慌てて自分のその思考を打ち消した。
青薔薇は栽培が非常に難しく、貴重なのだ。寝台を埋め尽くすほどの確保は不可能に違いない。
ソフィアは気を紛らわせるために、部屋の中をうろうろとした。
花は甘く香り、一息吸うごとに、むせかえるほどの強い香気にくらくらしてしまう。
落ち着かなすぎて、ため息が唇からこぼれた。
そのとき、ドアをノックする音が響いた。
「姫君。本日の勝者の青薔薇です。お部屋に入れて頂いてよろしいか」
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