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「もう十分、伝わりました。俺も、大好きです。俺と付き合ってくれますか」
「もちろん……あぁ、やった! 嬉しい!」
丹羽さんが、立ったまま思い切りガッツポーズをする。ガッツポーズしたいのは、俺の方なのに。
だって今日から、丹羽瑛の表も裏も、俺だけのものなんだから。
恋人になったのに苗字呼びは不自然な気がして、照れるけれど提案をする。
「ねえ……、瑛さんって呼んでもいい?」
「もちろん。俺も特別な呼び方がしたいな」
例えば、こんなのはどうかな……と瑛さんが繰り出した案は、破壊力抜群に俺の心臓を撃ち抜いた。
「ナツ」
もう我慢できなくて、立ったまま唇を重ねる。迎えるように首を曲げてくれてくれたのに、こちらも背伸びしないと届かなくて切なくなる。そんな俺を瑛さんは、ぬいぐるみでも抱えるみたいに愛おしげに抱き寄せた。
そよ風が吹くみたいに、嫌な感情が全て消える。汚い部屋が、一瞬で柔軟剤のCMの草原よりも幸福な空間に変わった。
「今日は、最後までしてもいいかな」
「ん……うん」
「その……教えてほしい」
「俺は榊木先生ですよ。任せてください」
そのままベッドに体を預ける。シングルベッドのスプリングが、成人男性二人の重みに耐えかねて悲鳴を上げる。その音を鳴らしては、くすくすと笑って絡み合い、またベッドを軋ませた。
俺達はただじゃれ合って、掌の大きさや膝から先の長さ、唇の厚さを比べ合った。その全てで俺は負けたけれど、瑛さんはそんな貧相な体の隅々にまで唇を落としてくれた。
「もう、我慢できない。ナツを抱きたい」
「俺も……瑛さんが欲しい」
受け容れる準備をして瑛さんを俺の中へと導く。任せろなんて言ったけど、俺がリードするなんて、やっぱり何だか落ち着かない。
瑛さんのそこは相変わらず凶器的なサイズだけど、心も体も大きな愛で満腹になるみたいで全然つらくない。
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