第一章

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 後処理をして、さっきの空き箱を潰そうとすると、一枚のチラシがパラパラと舞った。 「QRコードを読み取るだけで、無料プレゼント……」  ちょうど目の前にあったスマホのカメラをつけて、チラシを翳してみる。  怪しいサイトに繋がってウイルスに感染するかも、という危惧がなかったわけではない。けれど、一体何がもらえるのだろうという興味の方が、僅かに上回ってしまったのだ。 「ご登録済みの住所にプレゼントをお送りします」  切り替わった確認画面の上を、仲村さんからのメールを知らせるバナーが遮った。 『お疲れ様です。ネームは順調ですか。それと大切なお知らせがありますので、近いうちに弊社まで来ていただきたいです』  根拠はないけれど、何か悪い予感がする。これがいわゆる虫の知らせってやつなのか。  打ち切りか、契約解除か。担当を降りたいとか? 俺、何も問題になるようなことしてないよな?  丸出しの下半身が冷房で冷えたのだろうか。俺は情けなく、一つくしゃみをした。
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