第一章

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「聞いてない! 聞いてない!」 『言いました! 言いましたって!』 「あることは聞いたけど、俺は行くなんて一言も言ってない!」 『今更無理ですよ! 連れて行きますから!』  これ以上ない低レベルな水掛け論を繰り広げる午前十時。心地よい二度寝を阻害した仲村さんからの電話は、寝起きのガラガラ声を更に荒げるのには申し分ない内容だった。  『バラキス』のアニメのアフレコに、俺を連れて行くと言うのだ。それも今日、今から。  さっきから繰り返している通り、俺は一度も行くなんて返事をした覚えなんてない。 なぜこんなことになったのか。約一か月前の記憶を呼び覚ましてみる。
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