二十四

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「今回は木場沙也加とは戦えなかったから、来年は絶対に倒す。そのために自分の剣にさらに磨きをかける、三年生になったらまた戻ってくる」  と言った。  そして真紀は、旬に、 「あんたは宇津井道場の跡継ぎなんだろ、道場、どうしたんだ、このままでいいのかよ、どうするんだ」と迫った。  旬は、後ろから頭を殴られたような衝撃を受けた。答えられなかった。道場のことなど、何も考えていなかったのだ。 「お父さんはさぞ無念だっただろうに」と言われ、愕然とした。自分のことしか考えていなかったことに気づいた。  真紀は、九州から戻ったとき、小学生当時評判だった宇津井道場へ通うつもりだったが、当の道場がなくなっていたことがものすごく残念だったと言うのだ。 「それをなぜ言わなかった」 「言ってどうする、道場は、もうないんだろう」 「すぐに戻るから」真紀は阿仁川工業剣道部の五人に礼を言って去った。  個人戦二位まではインターハイの出場権を与えられる。インターハイに向けてさらなる修行を積むために、真紀は島津とともに鹿児島へと向かった。  飛行機の中、川添真紀と島津大陸が並んでいる。
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