二十四

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 沙也加とのことはともかく、大会で一定の成果を上げたことで、真紀は柔和な表情をしていた。 「刀、見つからなかったね」窓の景色を眺めながら真紀が言った。窓の外には雲海が広がっている。 「脇差は、沙也加の家にあるらしい。赤い鞘の小さい日本刀がある言うてた」 「そうだったんだ」 「付き合うようになって、家に行けるまでの仲になったら探すこともできたんやが」 「振られたもんね」 「違う、見切ったんや。まどろっこしいことは性に合わんのや」 「目的があるんだから、なりふり構っていられないはずなんだけどね、甘いね」 「まだチャンスはある。居場所はわかってるんじゃ、どうにでもなるさ。いざとなれば、こっちから直に押しかける手もある」 「ふうん、まんざらじゃあないってことだね」 「なにが」 「まだ沙也加に未練があるってことじゃない」 「違うて」 「違わない」 「違うて」 「無理しちゃって」 「問題は刀じゃ」 「家伝の刀っていうやつ?」 「そや、それが一番の問題なんや。それを取り戻さんと、わいは認めてもらえんのや」 「わたしとのことも?」 「そうじゃ」大陸は目を伏せ、呟くように言った。
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