二十五

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二十五

 総体が終わり、真紀が去り、阿仁川工業高校剣道部は、ぽっかり穴が開いたような状態になっていた。  数か月の間だったが、真紀の存在は、良くも悪くも大きかったということだ。 「やっぱりあの二人はできてんだぜ」と松川。  これまで過度に負荷をかけてきた身体の調子を整えるために、しばらく練習を休むことになったのだが、五人は、放課後になると、申し合わせたように道場に集まっていた。 「鹿児島を行ったり来たりって、どんだけ金持ってんだ、あいつ。ひょっとしてお嬢様か」奈良岡が言った。 「いや」と松川。 「知ってんのか」 「あの島津ってヤツ、親がミリオングループの重役らしい」 「なんで知ってるんだよ」 「親父が言ってた。今度、大型ショッピングセンターが建つっていう噂があるだろ」 「ああ、あの、ショッピングセンターだけじゃなくて、老人施設とか公会堂とかが地域全体にまとめられるっていうヤツだな」」 「その後で病院も建つっていう話だ」 「真紀はそいつの彼女ってことか」 「うまくやったよなあ」 「金はあるんだ」 「で、島津は道楽息子ってわけか」
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