二十五

2/3
前へ
/147ページ
次へ
「金があれば、精神的に余裕がある。俺たちみたいにぎすぎすした性格になることもないってことか」 「真紀は玉の輿だったってことか」 「かもね」 「かもねじゃなくて、そうだろ、もはやあの男と夫婦みたいに一緒に行動してるんだからよ」 「そうだな」  旬は松川の話を聞き及び、所詮自分とは関係のない世界のことだと聞き流した。 「真紀にはあの島津ってやつがいたから、俺たちのことを見下してたんだろう」  奈良岡が言った。 「見下すって、どういうことだよ」と園田。 「人とは思っていないって言ってただろ」 「やりすぎたか」と松川は旬に視線を送った。 「仲良くしてたら、おこぼれが回って来たかもな」 「何の」 「真紀からさ、防具一式新しくしなよ、とか」 「おまえ、防具、欲しいのかよ」 「いやべつに」 「なら言うな、馬鹿」 「でも俺、上下白にして試合に出てえな」白の道着に白の袴でということらしい。 「似合わねえよ」 「なんで」 「ガラじゃない」 「そう、俺たちは藍染めの道着でたくさんだ」  旬は、知らんぷりを決め込んでいる。 「あいつ、俺たちのことを最低だって、人間じゃないって言ってただろ」 「そうだな」
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加