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終章
川添真紀は鹿児島から戻ってきたが、インターハイに出場するため、すぐに旅立った。阿仁川工業高校からの出場選手は真紀ひとりなので、北新高校と行動をともにしている。
「おい、旬、起きてるか」
夏休み前の試験も終わり、若月組社屋の屋上で日向ぼっこしていた旬に、竹中が声をかけた。
「はい」旬は顔にかけていたタオルをはぎ、むくりと身体を起こした。
太陽の光が燦燦と降り注いでいる。旬の身体は汗にまみれている。
「旬、刀のこと、覚えてるか」
「はい、もちろん」家伝の刀だ。忘れるはずもない。
「出来上がったそうだ、取りに行ってこい」
「はい、場所はどこですか」
「会津だ」
「え」
「なんだ、行きたくないのかよ、すぐに夏休みだろ、それからでいいから行ってこい。そこには好きなだけいていいぞ」
「いていいって、どういうことすか」
「そのままの意味だが、なにか問題あるのか」
「会津、ですよね」
「それがどうした」
「いや、遠いのかなって思って。で、会津って、何県なんすか?」
(了)
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