藍を継ぐもの～藍の絆③

序

　この一撃必殺の剣、示現流により政府軍は圧倒され、乃木希典少佐は連隊旗を奪われてしまった。
　政府軍は、この薩摩軍の斬り込み戦術に対し、警視隊から抜刀隊を編成し、対抗した。
抜刀隊の多くは、薩摩藩士を「戊辰戦争の敵」と恨む旧会津藩士である。重蔵も、志願した。
　もとより、旧会津藩士たちは、政府のためではなく、会津藩に対する忠誠心、薩摩軍への恨みのみにより、この場にいるといってよい。
　会津藩は、将軍からも前天皇からも深い信頼を受け、藩の全力を傾けて京都を守ってきた誇りがある。
　それを朝敵と仕立て上げ、邪魔者は排除するとばかりに力で侵略してきた薩摩軍。藩を壊滅させられた恨みは海よりも深い。
　政府に逆らう薩摩軍を討伐するという大義名分を得た今、大手を振って暴れられる、命ある限り、薩摩藩士を、斬る。ひとりでも多く、薩摩藩士を、斬る。己の力を尽くして散るのであれば本望だ。
　我々はようやく死に場所を得た。そういう覚悟で、旧会津藩士たちは、ここにいるのだ。
それでも薩摩軍の抵抗は凄まじいものがあった。簡単には進撃できない。一進一退の状況が続いた。