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 相手は、そうかそうかと言うかのように頷いた。 「じゃあ、見せてもらおうかいのう、おい、こら、勝負じゃ」  持っていた刀でこちらを差した。 「おう、にっくき薩摩め、覚悟」 「示現流、島津陸之介(しまづりくのすけ)!」 「神道無念流(しんとうむねんりゅう)、宇津井重蔵!」  重蔵は、島津を睨みつけた。ふつふつと怒りがこみ上げる。 「薩摩藩士、ひとり残らず、斬る」  島津は、八相をやや崩したような構えをした。示現流の構えだ。 「なにを言うかあ、覚悟するんはそっちじゃあ」  構えたとたん、こちらに向かって走ってきた。雨の中とは思えない速度だ。 「きえええええぃ」  甲高い奇声を発しながら走ってくる。  重蔵は、青眼に構える。 「覚悟せええっ」  振り下ろされた大刀を、重蔵は、右に一歩踏み出し、よけた。  相手の刀は空を切る。空を切ったが、島津は瞬時に刃を返し、そのまま斬り上げてきた。  今までの相手とは違った。斬撃の速度が一段階も二段階も違うと感じた。若いだけが理由ではないようだ。  しかし重蔵は「やることは同じ」と冷静だった。
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