地震、カミナリ、笛オヤジ

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「あなた。真一さん、嘘をつかないまっすぐで気持ちいい人じゃないですか」 「ぴ~……」 「ふたりとも、顔を上げてって、お父さんが」  お母さんの言葉を聞いて俺は顔を上げた。お父さんはもと座っていた場所にゆっくりと腰を下ろした。 「あなた」 「お父さん」  お母さんと康子がお父さんに話しかけた。お父さんは黙ったままだった。俺はお父さんをまっすぐ見つめた。 「お願いします!」  お父さんは笛を口から外し、お茶をひとくち飲んでから、また笛をくわえ直した。 「……、ぴー。ぴぴぴぴぴ。ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ」  その笛言葉を聞いて康子とお母さんは喜びの声を上げた。 「やった!」 「え? なに? やったの?」  やったっぽいけど、俺はイマイチ喜びの輪に入れなかった。いい雰囲気なのに。はじめて笛言葉がわからないことを悔しいと思った。 「『こちらこそよろしくお願いします』だって!」  康子が訳してくれた。 「や、やったーーー!」  伝言ゲームの承認では心の底からは喜べなかったものの、俺はできうる限り全力で喜んだ。  お母さんが俺たちの後ろにしゃがんで、大きく抱きしめるように康子と俺の腰に手をまわした。 「よかったね、ふたりとも」  喜ぶ俺たちを見て、お父さんも小さくうなづいた。 「ぴぴぴぴぴ、ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ」 「『これからも二人仲良くやるんだぞ』だって」
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