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なんで、自然なんだ。なんで、康子も、康子のお母さんも、お父さんとの会話が自然にできているんだ、俺はそのことが気になって仕方がなかった。
「康子」
俺はお父さんに聞こえないように声を忍ばせた。
「なに?」
康子も俺に合わせてささやき声で返事した。
「お父さんって……、なんで?」
俺は顔をなるべく康子の方を向けないようにして、口の端を曲げて康子に尋ねた。
「なんでって、なに?」
ひょっとしてセンシティブな問題があるのかもと思い、明言を避けて康子に尋ねたのだが、全然質問の意図が伝わらなかったようだった。俺は意を決して尋ねた。
「康子のお父さんって……、なんで、笛、くわえてるの?」
俺は固唾を飲んで康子の返事を待ったが、康子はさも不思議そうに、
「なんでって、なんで?」
とキョトンとした表情で首をかしげた。
俺はささやき声で怒鳴った。
「だって、普通のお父さんは笛くわえないでしょ!」
康子はささやきで驚きの声を上げた。
「え、そうなの? うちのお父さんは私が物心ついた時から笛をくわえてたよ」
「物心ついた時から? え? ずっと?」
「ずっと」
「外でも?」
「外でも」
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