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「えーと、そのー」
「いやー、真一さんはそんなにモテなかったって、前に聞いたけど?」
ナイスアシスト、康子!
「あ、そうそう、そうですよ。僕はそんなにモテなかったんですよ」
俺と康子の態度に不自然さを感じているのか、お父さんの片っぽの眉がピクピク動いた。
「ぴぴぴぴ、ぴーぴっぴ? ぴぴぴーぴ?」
「真一さんはすごく仕事のできる人よ。新人での営業成績はトップクラス……」
「ぴぴぴぴ、ぴーぴぴーぴぴー!」
「『お前に聞いてるんじゃない!』」
「ぴぴぴ、ぴぴぴぴぴぴぴぴーぴぴぴぴぴ!」
「『ワシは真一君に聞いているんだ!』」
康子が通訳に必死になりすぎて、俺に喋る隙を与えてくれなくなった。
「ぴぴ、ぴぴぴぴぴ」
「『なぜ、マネをする』」
「ぴぴぴぴぴぴぴぴ?」
「『馬鹿にしてるのか?』」
「ぴーぴ! ぴぴぴぴ!」
たぶんオウム返しの康子に嫌気がさしたのだろう、お父さんが部屋の向こうへ向かって大きく笛を吹いた。
部屋の向こうからパタパタとスリッパの足音が近づいてきて、ふすまがスッと開いたかと思うと、お母さんが部屋に入ってきた。
「あらあら、どうしたんですか、お父さん。そんなに声を荒げて」
「ぴぴぴぴ、ぴっぴぴぴぴぴぴぴぴ!」
「まあ、康子。お父さんは真一さんと真剣にお話をしたいのよ。邪魔しちゃダメ」
「いや、邪魔する気はないんだけど……」
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