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僕は何冊かの参考書を買った。彼女も何冊かの参考書を手にしたが、結局何も買わなかった。僕たちは一緒に店から出た。温かい春の風を感じながら僕たちは店先で立ち止まって話した。
「恭平君は塾に通ってるの?」
「通ってはいないよ。でも通わなきゃいけなくなるかもね」
「いいよね。通わせてくれるなんて」
「君は?」
「うちはお金がないからダメだよ。自力で頑張るしかない。この高校に入れたのは奇跡。親も受かるとは思っていなかったんだ。私も冗談半分で受けたの。でも受かっちゃった。それで入学金なんかを用意するのに親は駆けずり回ってた。妹も難関私立中学に受かっちゃってさ・・・」
「それは大変だね」
「結局さ、お金がある家庭の子がきちんと勉強ができるってこと。私、そんな世の中は嫌い」
「僕もそう思うよ。でも君もT大に入りたい?」
「私はそれは目標にしていない。中学時代はただ他の人に負けたくなかっただけ。でも、この学校に入ったらこの有様。どうしたらいいのって感じ」
「しかたないよ、頑張っていこう」
「知ってる? うちらGクラスじゃない」
「そうだけど」
「入試の成績順で露骨にクラス分けされてるのよ」
「へえ。知らなかった」
「A組が20名。それから40名ずつ、B、C、D、E、F」
「僕たちがG組・・・。A組って20名なんだ」
「そう。A組は超エリートクラス。T大理Ⅲコースよ。BがT大。CがK大。Dが有名国立大、Eが有名私大、Fがその他」
「僕たちのクラスは?」
「Gは落ちこぼれクラスってことよ。うちらには、A組のような授業料免除もないし、学校に学費を払うだけの養分みたいなものよ。君は何も知らないのね」
彼女は笑って言った。僕は言葉を失った。
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