第三章:処刑の少女

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家に帰ると、まだ両親は帰っていなかった。 私はいつも通りベッドに潜り込み、ひと時の安らぎを感じる。 しかし同時に『何かが変だ。』と感じた。 いつも感じる安らぎとは違い、胸の中が空っぽになったようなお腹に穴が空いたような冷たいような空虚な感じがする。 いつになく、空腹は満たされているのに。 訳もなく涙が溢れて止められなくなる。 それなのに依然、感情はわからないままだ。 朝になり、街へ出た。 朝になっても両親は帰ってこなかった。 寂れたいつもの街へ出ると、いつもと様子が違った。 私は二人の兵隊らしき格好の男に連れられ、海の見える高台に来た。 どうやらここは処刑場らしい。 両手を縛られ、目隠しをされたまま、私は何を言っているのかわからない大人たちの声を聞いていた。 目隠しが外される。 目の前には大きな木の門と、紐で吊るされた刃物が見える。 そしていつの間にこんなにいたのか、処刑台の前には多くの人々が集まっている。 その中に、少年の姿を捉える。 泣きながら、何やら大きな声で叫んでいる。 私には、少年の思いがわからなかった。 首を固定され、木の板で挟まれる。 少年と目が合う。 紐が切れ、長い刃物が私の首を切り落とした。 拍手とざわめきが広がるなか、少年は私の元に駆け寄り、兵隊のような人から私の頭を奪い取った。 泣きながら何かを叫ぶ少年を、私の肉体から引き剥がそうとする大人たちが見える。 私は、何も感じなかった。 最期のこの時でさえも。 結局、少年の考えていることも何一つわからなかった。 静かになった空間に響き渡る波の音だけが、とても心地好く聴こえた。
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