最終章:私

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最終章:私

「ひっく……うぇえ……えーん……うう……ぐすっ……」 大きなクスノキの根っこにもたれて、私と同じくらいの歳の子が泣いている。 膝を抱えて顔を埋め、ずっと一人でそこにいる。 私は気になって、その子に声を掛けた。 「ねぇ、どうして泣いてるの。大丈夫?」 泣いていた男の子は少し顔を上げ、不信感と恐怖心のようなものを滲ませた目で、私のことを見る。 「悲しいの?どこか痛いの?」 私は問う。 男の子は小さく首を振って、「寂しい」と零した。 私は少しほっとした。怪我をしてなくてよかった、と思った。 でも、この子はなんで寂しいんだろう。 私は男の子に手を差し出して、微笑んでみせた。 「じゃあ、あっちで私と一緒に遊ぼうよ。寂しくないよ!」 男の子は一瞬驚いたあと、ぱっと明るい笑顔を浮かべた。 「うん!……いいの?」 遠慮がちに伸ばす手を、私はしっかりと握りしめる。 男の子が立ち上がり、私たちは一緒に駆け出した。 「うん、いつでも遊ぼう。今までみたいに、大人になっても、来世でも、ずーっと。」 私は繋いだ手に力を込めた。 思いもよらない言葉が、私の口から溢れ出す。 「あなたは覚えていなくても、きっと思い出すからね。」 だから、何があっても本当は大丈夫なんだよ。 戸惑うより先に、確信を持った。ああ、たぶんずっと繋がっていたんだ。 今日この日、この時まで、そしてまたずっとこの先も。 私たちはずっと、ずーっと、本当はずっとずっともっと昔から、一度も切れることなく繋がってる。 「だから、また信じてね。 私も、あなたを思い出して、今度はちゃんと信じるよ。」 繋いだ手が強く握り返された。 その瞬間、私の意識は”私”に戻る。 「ただいま、”未来の”私。今帰ったよ。」
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