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暖炉のある暖かい部屋に着くと、子供たちが絵本を読んだり絵を描いたり、走り回ったりして遊んでいた。
そこに、馴染みのない二人の大人が見える。
「あ…!」
そのうち一人の男のほうが、少女を見つけて顔を輝かせた。
少女はすぐさま、私の背後に隠れる。
「こんにちは。あなたがたが、この子の……」
言いかけて、私は言葉を止めた。
少女に目をやる。
じっとこちらを見つめたまま、何も言わない。
「申し訳ありませんが、少し考えさせてあげてください。彼女はまだ、心の整理が出来ていないようですので。」
私の言葉に男性は肩を落とし、あからさまに残念そうにした。
その隣にいた女性も、何も言わないまま男性の手を取って出て行った。
私は二人を見届け、少女に視線を戻す。
少女はもう私の傍を離れ、他の子と絵本に見入っていた。
「はぁ…」
「サニーヴァ先生。ありがとうございます。きっとあの子もいつか、自身で乗り越えられる日が来るでしょう。」
私は管理者の彼の言葉に頷き、微笑んだ。
「サニーヴァ。」
今度は一人の少年が、私の近くに立っていた。
真っ直ぐ見つめるその目は、とても澄んでいて力強かった。
少年は絵本を差し出して
「これ読んで」
と言った。
私が少年に読み聞かせていると、他の子たちも周りに集まり出す。
子供たちのリクエストに応え、色々な絵本の読み聞かせをしていると少年は不機嫌そうに暖炉のほうへ行ってしまった。
いつもの光景だ。
少年は私に対してとても真っ直ぐな目を向けてくれる。
いつも真摯で、素直だ。
それなのに、他の子供たちや管理者の彼とは距離を取りたがるところがある。
私が他の子たちと仲良くしているのも気に食わないようだ。
そのため集団の中にいても、一人で過ごすことが多い印象だった。
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