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いつのことだったか。
それは本当に突然の出来事だった。
視界が真っ白になり、意識が遠のく感覚を覚える。
目が覚めた時には病院のベッドに横たわり、体を動かすことが叶わなかった。
全身が重くて痛い。筋肉に力が入らない。
隣で、啜り泣く声が聞こえる。
目だけを動かして、何とか少年の姿を捉えた。
泣き腫らした目は赤く、声を出すのも辛そうだった。
(よしよし……泣かなくていいですよ。私は平気ですからね……)
頭を撫でて慰めてあげようにも、手に力が入らない。
どうやら声も出せないようだ。
病気なのか、事故なのか。よく覚えていない。
全身の感覚も意識の境界も曖昧で、どこが痛いのかさえよくわからない。
ただ、管理者の彼も含め、施設の子供たちがみんな傍にいてくれていることはわかった。
私にとっては、幸せな最期だった。
生前、少年にもっと伝えたいことがあったが、その多くは叶わなかった。
本当にシンプルな教えだけを、繰り返し説いていた気がする。
この子が、自分の道を見誤ることなく、しっかり前を向いて歩いて行けますように。
私の肉体が亡くなったあと、彼が指揮を取り、子供たちと共に祈りを捧げてくれた。
私が安らかに、眠れるようにと。
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