初めての十二支会合。 -あの日、実はこうだった-

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 ここは山のてっぺんにある、神社の社務所。遠い昔の元旦に、大勢の動物たちが競い合い、目指したあの場所。  十二支の順番が決まったのもまた、ここである。  今日は、初めての十二支会合の日。  三十畳ほどの和室に、十二匹の動物。  それぞれ座布団の上に腰を据え、円を作った。 「まず初めに言いたいのは、ぼくのご先祖様はズルなんかしていないってことっチュ」  ねずみのその発言に、早々と待ったを入れたのはへびだった。自身をぐるぐる渦巻いて、三角の上から顔を出す。 「おいおいねずみくん。今さら何を言っているんだニョロ。君のご先祖様は、うしくんの頭の上に乗り、ゴール手前でそこから降りて、一番にテープを切ったんだニョロ。これは有名な話だニョロ」  周りの皆も腕を組み、頷いた。  ねずみはチチチと、首を横に振る。 「君たちは、どうしてそれがズルだと思うっチュ?ぼくを見てチュ。この中でも、一番体が小さいだろう?ねずみが馬鹿正直に勝負へ挑んだところで、勝ち目などないんだチュ。だからご先祖様は、工夫をしたんチュ。ぼくたち小さいねずみが、どうやったら干支に入れるかって」 「それが、うしくんを利用した理由ニョロ?」 「利用って言い方は気に食わないっチュ。ご先祖様は自身を客観的に捉え、己を取り巻く環境を判断し、さらには下調べも入念にした上で、うしくんを選んだんだっチュ。とらくんや、いのししくんの上ではスピードが速すぎて落ちる可能性があるし、さるくんはしょっチュウ頭を掻くからね。だからうしくんを選んだ、いいや、うしくんは選ばれたんだっチュ!」  ビシッとねずみの前足で指された牛は、どこか複雑な表情を浮かべていた。 「モ〜、そんなのモ〜どっちでもいいモ〜」
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