初めての十二支会合。 -あの日、実はこうだった-

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「せっかくの機会だ。ぼくも言いたいことがあるワン」  伏せをしていたはずの犬が、いつの間にやら姿勢を正して座っていた。 「さるくんのご先祖様が、あの日ぼくのご先祖様にしたこと、謝ってほしいワン」  犬の隣で胡座をかいていた猿は、ウキ?と小首を傾げた。 「何がウキ?あの喧嘩は、両成敗で終わったはずウキ」 「違うワン。先に裏切ったのはさるくんのご先祖様だワンッ。一緒に走ろうと約束していたのに、さるがスピードを上げたワン」 「それは違うウキッ。ぼくのご先祖様が沼に落ちたのに、いぬが助けてくれなかったから喧嘩になったんだウキッ」 「違うワン違うワン!さるくんはいつもそうやって誤魔化そうとするワン!」 「なんだウキ!喧嘩するウキか!?」 「やってやるワン!」  たちどころに始まる争いに、犬猿の仲とは正しくこのことだと皆が呆れ返るなか、鶏だけが仲裁に入った。 「こらこらふたり共、やめなさい。今すぐ喧嘩をやめないと、耳元でコケコッコーしちゃうわよ?」 「だってこのさるが!」 「うるさいウキ!」 「やっぱり私が(あいだ)にいないとだめねえ」  ほらほら、と鶏は自身の座布団を持つと、それを猿と犬の狭間に置く。 「神様が十二支をこの並びにしたのも、頷けるわ。このふたりの仲をトリもつのが、私の役目ね」  猿、鶏、犬の順で並んだ三匹には、皆が苦笑した。
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