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「おまえ、何で虎と一緒にいるんだ?」
遊び飽きたジャックは突然、ボロボロの体を震わせている僕にそう聞いた。
「何で、って...僕の父ちゃん、だからだよ。」
必死に声を出した僕をクロが鼻で笑った。
「んなわけねぇだろ?お前はただの猫だよ。あいつは虎。猫と虎が親子な訳ねぇよ。」
...ねこ?
違う、僕は虎だ。だってずっと父ちゃんと一緒にいるんだから。
「おいおい、言ってやるなよ。こいつはきっと親猫に捨てられたんだ。だからつがいもいないデカぶつが情を効かせて拾ってやったんだろ?」
ウルが笑いながら言う。意味がわからない。
「違うよ...僕は父ちゃんの子だもの。」
僕が言うと、三匹は顔を見合わせて大きな笑い声を上げた。
「こりゃあいいや!とんだチビ虎だなあ!」
「しかも弱ぇのなんのって!」
「おまけに牙も縦縞もねぇ!」
「それはまだ僕が子どもだからだよ!今にきっと父ちゃんみたいな模様が...」
僕を馬鹿にした笑いに悔しい気持ちがこみ上げて必死に言い返すも、そのことに違和感を覚えていない訳でもなかった。だって狼は虎より小さいのに、ウルは僕よりも大きいから。
「じゃあ帰って確かめるといいよ。お前が思ってることは間違ってるからさ。」
ウルが僕を見て言った。
僕は今まで、その行いをどことなく避けていた。僕自身は虎だと信じているけど、もしもが事実だったら僕はどうなってしまうのか不安だったから。
でもこれもいい機会かも知れない。僕が虎だと胸を張って言うためには必要な事だ。
だから僕は痛い体を何とか起こして、わかったよと残し、住処の方に体を向けた。後ろでは三匹の笑う声が聞こえていた。
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