事件発生!

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◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 数日後の夕方 。会長とセシルが校門に佇んでいると黒いクーペが現れた。 スピアの車だ「待たせたね」彼は窓から顔を出すと乗りなと言った。「あら、意外と紳士なところもあるのねぇ」セシルは軽口を叩く。二人が後部座席に乗ると同時にクーペは滑り出した。「どこに連れて行くつもり?」 「すぐわかるよ」 彼はそれだけ答えるとギアチェンジをして、スピードを上げた。しばらく走って住宅街の一角にある駐車場で止まった。 「ここは?」セシルが訪ねると彼は振り返らずに言った「オレの家だよ。ガレージに寄らせてもらった」 「そう、ご家族は?」 するとようやく振り返り、「両親は死んだ」 とだけ答えた。セシルが気まずげな表情を浮べている間に彼は鍵を開けると家のなかに入っていった 。 二人は家に入った。「お茶を入れるから、そこにかけていて下さい」彼はキッチンに向かった。ソファが二つ並んでいるだけのこぢんまりとしたリビングにテーブルがあるだけだ。セシルは「なんか生活感無い」と思った。 「で、話って?」会長が単刀直入に切り出した。セシルの膝の上で握られている手が小さく震えている。 「あぁ」 スッ、とコーヒーカップが二人の間に出された。「これは?」「ブラックは苦手でしょ?」 そう言ってミルクとガムシロップを差し出す彼もブラックのまま口をつける。「ありがとう。頂くわね」 彼女は手を伸ばすも一瞬迷うそぶりを見せて引っ込めた 。「何でそう思ったの? あたしがブラック駄目なこと」「前に一度飲んでいる所を見た事がある」「よく見てるのね」彼女は少し驚いた様子で「それで?」話の先を促した 。 「最近、この近くで銃撃事件が起きているのは知っているか?」 彼女の目が大きく開かれた後で小さく肯いた「それなら話が早い。その事件を解決して欲しいんだよ」 セシルの顔色が変わった。 「ちょっと待って。何で? ただの高校よ?」彼女が言い終わる前に「ただの?」男が言葉を被せる。「ただの、何だ?ただの高校生なのか?本当にただの?ただの高校生がただの女子高生やただの女医と一緒に事件を解決できるとでも?お前らがただの学生ならそれは只事に過ぎない」男の言葉は止らなかった「お前らがもし只の学生でないのならば、その力を是非貸してほしいと思って来た」彼は一拍おくと語りかけた「お前らは、一体何をしてきた?」 彼は語り続ける「お前らのような力を持つ人間が、何もせずに過ごして来たわけがないはずだ」会長は押し黙ったままうつむいている 。セシルは目を瞑って考え込んだ 「なぜだ?」男の口調がわずかに強くなる。セシルの脳裏にはあの夜の記憶が蘇る。 あの男達、いや男達の影がセシルと会長を取り囲むように現れた 。会長の前に一人。セシルの後ろに一人 スピカの姿が見えた気がしたが気が付くとその姿はなかった……「わたしたちは……」セシルは口を開いた……そして再び閉じた……唇がかすかにふるえていた。喉につかえる思いがした。 だが、もう後には退けない。いや、引き返すことはできないのだから。あの夜の光景を思い返しながら彼女は言葉を続けた 「……わたしたちは……人を助けたいの」 彼女は顔を上げて、まっすぐに男の目を見据えながら続けた「どんな力があっても、人は一人では生きていけないの。助け合って生きていくしかないの。あなたにも、大切な人が居たんじゃなくて?」 スッ、っと彼は視線を外した。何かを堪えるように握りこぶしを作った 「そうだ、助けが必要だ」彼は顔を上げ真っ直ぐな眼差しを向けた「オレを助けて欲しい」「分かったわ。依頼を承ります」セシルの言葉を聞いた途端、スッと立ち上がると手を伸ばし握手を求めた。 「ようこそ我らが秘密結社〈科学学園の正義〉へ」 男の声は興奮に満ち溢れていたが、なぜか乾いていた ―――かくしてセシルと会長の戦いは幕を開けた
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