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◇ ◇ ◇
「ここね」とあるビルの屋上から周囲の様子を窺っているセシル達の姿がある。
そこは街中にある、どこにでもある平凡なビルで看板には会社の名前が大きく掲げられている
――そのオフィスの一室で机に向かい事務仕事をしている男。彼は時折窓から外の様子を確認するが変化はない 時計の針が進む度に緊張感が増していき、鼓動が激しくなった。
男は、はやる気持ちを抑え、大きく息を吐いた。そして意を決したかのように立ち上がると、おもむろに窓を開ける。そして、銃を取り出して構える その直後、背後で扉が開く。
「ちょっとあんた何してるの!」
女が部屋に入ってきた。
「お前か、どうしてここに?」
男は銃を下ろした
「あんたが遅いから様子を見に来たんでしょ。そしたら銃を持ってるし、びっくりして隠れちゃったじゃない」
「驚かせて悪かった」
「もう 気をつけてよね」
「それよりも状況は?」
「相変わらず」
女が肩をすくめると「ちっ」男は舌打ちをする
セシル達がビルを出ると「さっきの人、怪しくないか?」
「ええ、明らかに挙動不審ね。怪しい」
男が振り返り銃を構えた
「ちょっ、ちょっとあんた!」
「大丈夫、あいつは俺の仲間さ」
「仲間?」
「まぁ、いいじゃないか。とりあえず行こう」
男はそう言うと先に進んでしまった
セシルと小百合、二人の少女がそれぞれ魔法杖を構え、眼前に現れた敵をじっと見据えた。
対峙している敵の数は六人。全員が迷彩服を身に着けている
そのうちの一人が、口の端をつり上げニヤリと笑うと「よっしゃ!じゃ、行くぞ」と言った。
次の刹那。その体が消えた 小百合が「は、速いっ」
小さく声を上げた 迷彩男Aの体はすでに二人から十数メートルの距離にいる
しかし迷彩男の目にはセシルしか映っていないようだ。そのまま駆け抜けるとセシルに飛びかかった。
セシルがとっさに回避すると地面に激突。衝撃により土煙が舞い上がる
すかさずBが飛びかかる。
しかしセシルもすでに回避行動を済ませている。迷彩男はそのまま地面に突っ込むが勢いが衰えることなく再び跳ね上がり今度は空中で身をひねる。
Cも遅れてセシルに迫る
「こいつら人間じゃないよな?」
セシルがつぶやくと小百合はこくんとうなずいた
「なら遠慮はいらないわね。まずはこの厄介そうなやつから」
彼女はそう言いつつ、素早く魔法弾を生成し、銃口に込め引き金を引いた。
魔法は真っ直ぐに進み、着地しようとしている迷彩男の顔に直撃。爆煙が広がった 迷彩男が転倒したところで小百合が銃を向ける
「さすが、命中ね」
「まぁね」小百合がにっこりと微笑む
そして、残りの四人もあっという間に片付いた。するとセシルが、倒れた一人の懐を探り始める
彼女は「あった」と言って小さな手帳のようなものを取り出し、開いた。「えっと何々。『ターゲット確保。これから回収地点に向かう』だってさ」
セシルはそうつぶやくと同時に魔法を使い男たちの手足を縛った
セシルと小百合、二人は再び屋上にいた
「やっぱりあの人たち、おかしいですね」
「うん。さっさと逃げよう」
「でも、逃げるって言ってもどうすれば?」
「それは、こうやって……だよ」
セシルが小さく呪文を唱えると小百合の体に力が満ちていく
そして小百合が「行きましょう」
セシルの肩を掴むと、二人は柵の上に立った。直後二人が飛び降りた。
だが 落下の途中で小百合は手を離したのだ。セシルの魔法によって セシルは小百合を抱えながらも姿勢を保ち難なく地上に降り立つ 一方、自由になった小百合がセシルの腕から離れる セシルは振り返ると、屋上を見上げるとそこに人影はなく。そこにはぽっかりと空いた穴があっただけだった
「あの」小百合が言った。セシルは立ち止まり振り返る 小百合は真剣な表情でセシルを見つめていた。
彼女の瞳に決意が宿っているのが見て取れる セシルは、そんな彼女を無言で見返した。小百合の想いが伝わってくる。
セシルはその目をまっすぐに見据えた。そしてしばらくの後で静かに肯くと、彼女もまた、黙したまま深く肯きかえした
***
セシルと小百合が並んで歩く。そして小百合の案内の元、とある建物に向かっている。
それは大きな屋敷だった。門の前では屈強な体格の男が立っている 小百合が一歩踏み出した。
「お嬢さんがた。どちらへ?」
男は言った 小百合は毅然とした態度で男を直視する。
だがその視線に負けじと、男は鋭い視線を送り続ける
(すごい迫力。これがこの国の警察なのか)セシルは隣で様子を眺めている。やがて小百合は言った
「中にお知り合いが居ますので面会させていただきたいんですけど、だめでしょうか?」
少し上目遣いになり、不安げな表情で問いかける すると男が少し笑みを漏らした。小馬鹿にしたような笑いだ
「悪いがね。あんたらの知り合いに会うことはできん。帰りなさい」
セシルが「待ってください」と言うも「ダメだ」一蹴された。
セシルの肩をつかんで止めようとした その時だった。突然、男の腹のあたりから銃声。続けて「ぐふっ」男の腹部が赤く染まった 男がゆっくりと膝をつく「あなた、大丈夫?」女の声。視線を巡らせると、先ほどの女が居た
「ううう」
男が苦しそうにうめく。セシルと小百合はその光景を見て絶句した そこへまた銃の発砲音が響く。女の右肩に命中し、彼女は倒れ込んだ。さらに一発。女の手から拳銃が吹き飛ぶ。続けざまに三発撃ち込まれ女は完全に沈黙した
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