癒しのことば

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癒しのことば

―それは、とても懐かしい音だった― ―― ―― セシルの魔法による回復魔法。それによって傷の治った男は安堵のため息を漏らした 「すまない助かった」 「いえ」 セシルは短く答える そして男とセシルは小百合の方を見た。小百合が申し訳なさそうに頭を下げる そして「ごめんね。迷惑かけて」 「いいの。無事でよかった」 小百合が笑顔を見せるとセシルは、はっとなった。 小百合が撃たれる直前、確かに聞こえたからだ セシルが言う 「あの人達は?」 すると男は首を横に振った。 「わからん」 「どういうこと?」 セシルが尋ねる。 「ああ、奴らの素性は一切不明だ。目的はおろか人数すらも把握していない。ただ分かることがあるとしたら」 「何?」セシルが訊ねると男は、苦々しい顔を浮かべて答えた。 「やつらが持っているものは全て本物の銃で弾丸が込められていることだ」 小百合は俯いた。男とセシルは黙ってそれを見ている。 ――しばらくしてセシルが言う。 「ねぇ小百合。これ何かの映画撮影とかじゃなくて本当に起こっている出来事なんだよ」 男は驚いた顔をする。セシルが続ける。「それにしてもさ。よくわかったね」 小百合が微笑むと男もつられて口の端を上げた。 「わたしたちね、こういうことに関わっているから。そういうこともあるのかなって。でも、なんとなく分かったっていうか、気づいたらそうなっていた感じかな」 セシルと小百合は微笑み合う 小百合は言った「そろそろ戻ろうか?」 「そうだね」 セシルと小百合は同時に立ち上がると「ご迷惑をおかけしました」 そして小百合は男の方に向きなおすと「それと」と言いかけた時 「小百合!」 セシルは大声で名前を呼び、手を引っ張った。 セシルと小百合は再び柵の上に立ち、そこから下を見下ろすと「あのビル?」 セシルが言った。すると男が、うん、とうなずく セシルが言った 「それでは失礼します」 「気をつけるんだぞ」 「はい」 「あと、このことはくれぐれも」 セシルは、はいとだけ言って柵を飛び越えた。 少女達は魔法を使って戦いながら進んでいく― セシルが魔法銃を構え、銃口から火花とともに弾が射出される。 銃弾が敵を撃ち抜いた「さすがね」 小百合は感心して言う。 「まぁね」 セシルは、にやりと笑う。 二人は魔法を使い敵を殲滅していくがそれでも敵の数が一向に減らない 敵の狙いはあくまで少女達自身、もしくは所持している魔法杖にあるようだ 二人はビルの屋上へと出た。 だがそこで待ち構えていた敵がいた。 男、それもかなりの年配の人物だ 男は、はぁ、はぁと大きく肩で呼吸をしていた。 しかしセシルを見るとニヤリと不気味に微笑む 小百合が身構え、セシルを庇いながら男を見据えた。 「あんた。何者?」 「私はある方から命を受けたものでな。その魔法杖が必要なのだ。悪いが渡してくれないか?」 「それはできない相談ね。これは私の大切な杖よ」 小百合の言葉を受けてセシルは、きっぱりと答えた。 「ならしょうがないな」 老人の目つきが変わると同時に彼の周囲に魔法陣が複数現れた。小百合がすかさず、水と炎の混合弾を生成する。そして銃口を構える 老人の詠唱が終わると共に複数の魔法の矢が一斉に放たれた だが、その攻撃がセシル達に命中することはなかった。小百合が魔法障壁を展開したのだ 直後、激しい轟音と衝撃波が発生した 小百合の障壁と魔法の矢が衝突した結果だった。 そして爆発。煙が立ち込める。 セシルは銃口を正面に向けると魔法を発動させる。 そして小百合の足元に向けて撃った 魔法弾は地面に直撃。 小規模な爆裂を発生させ小百合の身体が浮き上がった。 魔法銃について この世界の魔道技術により作られた銃 。魔力を込めた特殊な弾丸を発射できる カートリッジ式のオートマチックになっている。 銃身が短く、持ち運びしやすいため、女性にも人気がある グリップ部分が魔法式によって操作され引き金を引くと自動的にトリガーガードに指が収まる。 装填数6発。マガジンは取り外し可能 *** セシルの視界の先で小百合は空中で体勢を整え、落下しながらも地面への激突を避けていた。 だが次の瞬間には、背後からの攻撃を受け小百合は吹き飛ばされた。 屋上の隅にあった貯水タンクに勢い良く叩きつけられる。 「小百合!!」 セシルが駆け寄る。 小百合が弱々しくセシルの服の袖を掴んで言った 「逃げなさい」セシルは思わず声を荒げた「どうして?」 小百合は微笑む。 「あの男からは尋常じゃないくらいの強い魔法を感じるわ」 小百合の顔色が徐々に悪くなっていく。 「お願いだから逃げて」 少女達は戦いながらも出口を目指す。 セシルは屋上の入り口付近で魔法を使った後「ちょっと、行ってくるね」とつぶやくと階段を下り始めた 。
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