23人が本棚に入れています
本棚に追加
死にたがり
高さ12メートルの校舎屋上。
ここから自由落下すれば、速度は時速55キロメートルに達する。
地面にぶつかった衝撃で全身打撲による骨折、内臓破裂、脳挫傷により死亡へと至る。
────と、ネットに書いてあった。
ご丁寧なことに『飛び降り自殺』と検索すれば『こころの相談ダイヤル』が一番上に出てくるけど、そこで思い留まるのは本気でやろうとしていない人だけ。
私のように何も感じないほど追い詰められ、あとは息をするのと同じように行えばいい人間は、そんなページは見ない。
見るのは、どの部位から落ちれば確実に死ねるか······ただそれだけだ。
頭から落ちよう。
そう決断した私は屋上に備え付けられたフェンスに指をかける。
よじ登って向こう側へ行けばいいだけ。そうすれば、あそこへ逝ける。
遺書はない。書こうとしても白紙を綴じるだけ。だから、何も遺すものはない。
瞳に絶望を宿した私は、虚無の心で足をかける。
さあ······逝こう
行動に移した────その時だった。
「よお、てめぇ······死にたがりか?」
突然聞こえた声。
幻聴ではない。その声は背後から聞こえ、私の行動を止める。
一体誰が······
私は振り向き、声の主を探る。
屋上に備えられた塔屋。その上から少年が私を見下ろしていた。
栗色のミディアムヘアに細身の高身長。私を見る目は鋭く、刃物を突きつけられたような恐怖を感じさせる。私は声が出せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!