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ソラヘンがそう言って麦茶のグラスを持って、一口ゆっくり啜っていくと、俺はまだ茫然としていて、
「ソラヘンは、その頃親父と知り合ってたのか?」
と訊ねると、ソラヘンは首を横に振った。
「いや。俺がそれを聞いたのは、働いてからだよ。誰にも言ってなくてさ。ずっと一人で抱えてたんだ。井上さんも誰にも言わなかったし。俺と富田と三人で飲んでた時に、初めて話してくれた。理はあんな感じだけど、色々苦労して、辛い思いもしてきたってこと。お前も、一応知っておけよ。人は表向きとは違う内面を持って、みんな抱えてるってこと。大地は、理より人間らしい感情があって、優しい男だからな。悲しい恋愛をしたろ?これからももっと経験してくんだろうけど、大地はそのまま、イイ男になれ」
ソラヘンは俺を真っ直ぐ見つめてそう言うと、俺はソラヘンを見つめて首を傾げた。
「なんで、そんな話を俺にするんだ?」
「うん?それは、お前が…」
ソラヘンはそう言いかけて不意に微笑むと、パソコンのキーボードを叩いて、
「あれ?昊おじさーん?」
とパソコンから女子の声が聞こえてきた。俺は「え?」と言ってパソコンの画面を覗き込むと、そこには聖香が映っていて、聖香もこちらを覗き込むように見て、
「あ、大地!」
と言って、驚いて目を丸く見開いていた。
「せ、聖香…!」
俺は咄嗟にソラヘンを見ると、ソラヘンは俺の肩に手をかけて、
「お前が、聖香の惚れた男だから、だよ」
と言って立ち上がり、まりねえに歩み寄った。
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