324人が本棚に入れています
本棚に追加
聖香の声が、耳の奥になだれ込んでくる。クスクスと含み笑いが聞こえて、なんか、泣きそう。
会ってなかったときは、もう吹っ切れてると思ってた。思い出として、切り替えることができると思ってた。でも、声を聞くと、…顔を見ると、思いが昂って胸が締め付けられる。
「大地?聞いてる?」
「えっ」
聖香に言われて、俺は我に返って聖香を見つめた。聖香はフッと微笑んで、
「卒業、おめでとう」
と言ってくれると、俺もそんな笑顔を見てちょっと照れながらも、小さく頷いた。
「サンキュー。あ、そっちは今何時?時差は7時間、だっけ?今、昼間?」
「うん。よく知ってるね。今日は学校も休みで、これから友達と出かけるの」
「友達…?…彼氏?」
「え?」
聖香は少し笑顔が固まって俺を見つめると、俺は自分でハッとして俯いて頬杖をついて横を向いた。
「ご、ごめん。何でもない」
俺が素直に謝ると、聖香も頬杖をついてニコッと笑った。
「女の子」
「…そ、そう?」
「気になる?」
俺はチラッと横目で聖香を見ると、ゴホッと咳払いして誤魔化した。
「ソラヘンがなんか言ってたけど、聖香。なんか、あった?」
「えっ」
今度は聖香の方が少し驚いて、俺の顔をじっと見つめてきた。
「建前ばっかで、本音が見えない、みたいなこと、言ってたよ。ソラヘンとなんか話してた?」
「…昊おじさん、お小遣いいっぱい送ってくるんだもの。心配しすぎでしょ?過保護だから、もうイイんだよって言っただけ」
最初のコメントを投稿しよう!