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「初めてする時は、ちゃんとしたところでしてくれるって言ってたのに、最近忘れてない?その言葉。ムード大事、とか言ってたのにぃ」
「ごめんごめん。つい。そこに、おっぱいがあって」
咲也は頭をかいてそう言って笑うと、あたしはまたムッとしてしまった。
「ほんと、馬鹿!ほら。もう帰らないと、お父さんたちに、怪しまれるから。帰ろう」
「え?もう?」
「そうだよ。あ、あと、旅行!楽しみだね!!」
「同じ部屋で寝れる?」
「なわけないでしょう??」
あたしはそう言って立ち上がると、胸元がスースーする。あたしはハッとして胸元に手を交差して押さえて、振り向いて咲也を睨みつけた。
「ホ、ホックを…っ」
「あっ」
咲也はあたしを見上げてニコッと笑って、
「そのまま帰れば?」
と意地悪なことを言い出した。
「そ、そんなことしたら、家帰ってお父さんに会っちゃったら、…咲也、フルボだよ!!」
あたしが咲也を睨みながら言うと、咲也はハッと我に返って、
「分かった分かった!!じゃ、こっちに来て。人の気配が…」
と言いかけた時、確かに人の足音が聞こえて、咲也はあたしの手首を掴んで奥の大きな木の陰に隠れた。そこに近所の人が通り過ぎていって、公園を近道として使っているようだ。あたしと咲也は木の影からその人が通り過ぎていくのを見て、
「あ、危なかった。通報されちゃうとこだった」
と呟くと、咲也も「フーッ」と胸を撫で下ろしている。
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