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だが、謎多き粉雪の正体を知ることになる事件があったんだ。
高校生活も切羽詰まってくる三年の秋、進学するのか、就職か、はたまた……と状況的にも不安定な時期だ。
俺のクラスには、高校に柔道推薦で入学してきたにも拘わらず部活をドロップアウトし、学外のワルとつるんではパー券なんかをクラスメイトに押し売りしたりするようになってしまったMという男がいた。
その日、Mは辺りを睥睨しながら虫の居所が悪そうに、肩を怒らせて教室の後ろのスペースを行ったり来たりしていた。その日は教師との進路についての面談日で、気に食わないことでも言われたのか、Mの機嫌は爆発寸前に見えた。クラスメイトも荒んでしまったかつての柔道部重量級のエースに対し、腫物のような扱をしていた。
そんな状況で、粉雪が面談を終えて教室後ろの扉からするりと入ってきやがった。
そのまま窓側の自分の席に向かおうとする粉雪は、Mと狭い通路の真ん中で鉢合わせることになった。
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