とんでも歯医者

ハンプティダンプティ

何とか治療を終え診察室を出ると、椅子に座り込んだ。

こんなに怒りで疲れる歯医者は初めてだ。

俺が放心しているとハンプティダンプティが女子高生に向かって手招きしながら甲高い声を上げた。

「ハァイ、当院の受診は初めてかしらね？」

まだ言ってんのかよ！
オープン初日にこの歯医者に来る客は全員もれなく『始めての患者様』だよっ！
さっさと診察券作りやがれ！！

おずおずと問診票を書き出した女子高生の手元を覗き込んだおばさんはおかしな声を上げた。

「んまっ、変わったお名前ね。ふりがなも書いてね」

女子高生は少しためらうように手を止め、意を決したようにボールペンを動かす。