とんでも歯医者

一旦落ち着け！

仕事を理由に正月も帰って来なかった実家へ俺はズカズカと上がり込む。

玄関の鍵は空いていた。

（相変わらず不用心だな。まぁ、田舎なんてこんなもんか）

俺はガチャリと居間の扉を開けた。

「ぎゃあああぁぁぁ！！」
「でっ、出たああぁ！！」

日曜日の昼下がり、こたつに入ってせんべいをかじりながらテレビを見ていた父ちゃんと母ちゃんが断末魔のような叫び声を上げた。

「ちょっ、俺だよ俺。騒ぎすぎだろ！」
こっちがとりなしてんのに、二人はカクカクと震えながら俺を拝みだした。

「なんまんだぶなんまんだぶ……」
「迷わず成仏しておくれぇ」

二人とも明らかに様子がおかしい。