1.マジシャン

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1.マジシャン

 瞳をあけると僕は、薄いフカフカな雲の上に居た。 僕は、しばらく星の瞬いている星空をぼーっと、見上げていたのだが、 「久しいな、ブルーノ。約百年ぶりくらいだな」 ブルーノに声をかけてきたのは古い友人で奇術師ジャムである。 「やぁ、ジャムしばらくぶりだね」 僕は、にっこり笑うと懐かしき友の元に駆け寄っていった。 「君は、本当に自由な奴だな。今度も目的なしの旅かい? 俺のところに来たということは、何か頼みごとでもあったかい?」 「いやいや、崖から思いのままに落ちたらここに着いたんだ。頼みごとといったらお腹がすいたのと、今夜は泊めてくれないか? ってところかな」 「なるほどな、わかったよ。お前さんは、俺の数少ない友人なんだ。うちに有るものを好きなだけ食べて好きなだけいれば良いさ」 「さすがジャム。助かるよ」  僕は、そう一言穏やかに言うとその場から立ち上がり雲で出来ている素敵な家へとあがった。 中の家具もやはり雲で出来ている物がほとんどで観ていて飽きない。 「夜ごはんは、カラフルわたあめで良いかい?」 「もちろんだよ。僕は、君の魔法でつくったこれが大好物だからね」 「水も飲む?」 ジャムは、いたずらをする子供みたいに笑いながらそう言った。 「それ、命の水だろう。僕らは、それでなくても長生きなのにそれを飲んだらものすっごい年月を生きなきゃならなくなるじゃないか」 「まあね」 「僕は君のように世間を要領よく渡って行く才能もないし、君のように長い年月を生きたいとも思ってないからね~」 僕は、そう応えるとジャムからわたあめを受け取りそれを口に運んだ。 「うん、甘い。とっても美味しいよ、ジャム」 「なぁ? ブルーノ行き先が決まってないなら明日、本の世界に行ってみないか?」 ジャムは、部屋にある大きな本棚から赤い革表紙の本を取り出して来た。 「魔法の本かい?」 「そうだよ。この本の中の大魔女なら君を楽しいところへ導いてくれるかもしれない」 「なるほど、悪くない」 「そうと決まれば明日、俺が魔法で本の中へいれてやろう」 「ありがとう」  そうして、僕とジャムは明日の楽しい魔法の時間にそなえて沢山のわたあめを食べてから眠りについた。
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