詩「金」

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か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、 かね、かね、かね、かね、かね、かね、かね、 金、金、金、金、金、金、金―― 金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金 金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金 欲しい、欲し、欲し、欲し、欲し、欲し、欲 しい、欲し、☆、☆、☆、☆、☆、☆、☆。 ……金が欲しい、金が、金が欲しい、欲しい 金  が、    鬱蒼とした林  枯れ     Nの独白 ――1986年に生まれたのです。ええ、島根県 の出雲という歴史ある町に生まれたのはいい のですが、なにせ両親は貧乏性だったもので、 さらにその末っ子、上に二人の姉と兄のいつ もお下がり、お下がり、お下がり、いつだっ たか、そう、あれは小学校のとき、周りはみ な自転車を乗り始めた頃で、男子の間ではミ ニ四駆に続いて何段にも切り替えられるマウ ンテンバイクが流行っていたのです、が、私 の家にそんな金がある訳もなく、私は姉の乗 っていたピンクのかわいらしい自転車(しか もなにかのアニメの美少女の絵まで描いてあ るじゃないか)を譲り受け、いや、受けるし かなく、泣く泣くそのメルヘンで乙女チック な自転車に乗って友達のマウンテンバイクの ケツを眺めていた次第でして、だからまあ、 なんといいますか、自転車に対する恨みとい うのは案外強烈なものでして、高校生の頃で しょうか、サドルが低いかっこいい自転車な んかを見ると――ああ、心の中がモヤモヤす る――つい魔が差したのです、私は使い捨て ビニール傘のカチッと押して開くボタン部分 を破壊して中にある部品で自転車の鍵を回す と(当時はこれが主流だったのです)サッと またがって近所のホームセンターに向かい、 ヤスリとスプレーを買ってまずは防犯登録の 番号を削り、その上から真っ白なスプレーを 全体に吹きかけて、そして自分の物にしたと いう、いや、なに、問題は金なのです、金、 金、金があれば私も自転車に対する恨みもも ちろんなかったと思うのですが(その前に本 当にうちは貧乏だったのか、今思えば怪しい ものですが……)その辺も人間として生まれ た所以、金以上金以下の人生と言いますか、 金に支配されるなんてなんともつまらないも のでしょう、ああカミサマ、私の罪をお許し ください、つまり私は金が欲しいのです、金 があれば――ね、金、金があれば、きっと― (―ああ、胸が、……苦しい――)
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