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第3話 常識をあざ笑う
「はぁ? 『オカ研の死神』って何? 俺が熊田と犬飼を殺したって事? やってねーし」
訝しがる猪瀬を横目に、ホームズ君は舌鋒鋭く指弾を始めた。
「1件目のホーム転落は分からない。 ただ少なくとも2件目、犬飼氏の行方不明に関しては、殺ったのはキミだ」
「はぁぁ~~!? 何を根拠に……」
「キミは犬飼氏を殺害した後、薬品で溶かして凍らせ、海に捨てたんだ。 それが可能なのは、親が薬局を営み、容易に薬品が手に入るミスター猪瀬。 キミだけなのだよ」
「いやいや……何で親が薬局の社長してたら、犯人扱いされんだよ」
「言い訳は止めたまえ。 日本に来てから読んだ、闇金ウシジマくんという漫画に描いてたんだ」
「ソースはウシジマくんかよ! 名誉毀損だぞテメェー!」
怒り心頭の猪瀬を取りなしつつ、ホームズ君に質問する。
「ホームズ君、……マジで言ってる? っていうか、証拠はあるの?」
「無い」
あっさりとゲロッた。
「うぉおい、流石にヤバいよ! 訴えられるよ!」
「フッ、安心したまえ。 今のはほんの戯れだ。 ボクが本当に知りたかったのは、今の話で激しく動揺した者……『オカ研の死神』は、キミだ!!」
今度は馬場を指差した。
「えぇぇ!? ぼ、僕!? ただビックリしてただけなんだけど……」
僕は仲裁に入りつつ、再度ホームズ君に確認する。
「ホームズ君、根拠は? まさか……馬場の顔色が変わったから?」
「その『まさか』だ」
「オィィイ! もうお前、黙ってろよ! ホントにボコられるよ!」
ホームズ君は興味ないとばかりに、プイッと顔を背けた。
「まっ、今のもただの冗談だ。 気を悪くしないでくれたまえ、諸君」
虎杖は呆れて席を立った。
「ラリッてんのかコイツ。 おい和兎村、妙な奴と関わんな。 馬鹿馬鹿しい、みんな帰ろうぜ」
他の部員達も、虎杖の後を追うように、ゾロゾロと部室を後にした。
ポツンと取り残された、ホームズ君と僕。
「あのさぁホームズ君……さっきのはマズいよ。 さすがに皆、怒るよ……」
「やはりキミはポンコツだな。 さっきの会話の中で、ボクはオープンクエスチョンとアセンブリという、二重の心理テクニックを仕掛けていた」
「えぇー!? てっきり気が触れちゃったのかと……」
「ボクが最初に睨んだとおり、やはりミスター猪瀬が怪しい」
「ホントに!? 今度は信用して大丈夫なの!?」
「ああ、間違いない。 彼の動向を、明日から二人でマークするんだ。 キミを僕の相棒に任命する。 いいかい? ワトソン君」
「和兎村なんですけど……」
猪瀬の死体が見つかったのは、翌朝の事だった。
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