第4話  ドアを開くもの

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第4話  ドアを開くもの

 翌日登校すると、猪瀬が死んだという話で、クラスは大騒ぎだった。  発見者によると、猪瀬の遺体が、オカ研の部室前に横たわっていたらしい。  警察の発表では、死因は窒息。  遺書等が無かったことから、他殺の線で捜査しているとの事。 「ちょっとホームズくん、猪瀬が怪しいとか言ってなかった!? 死んじゃったんだけど!」 「ボクとキミの『怪しい』には齟齬(そご)があるな。 ボクは彼の言動が怪しいと言ったのであって、決して彼を犯人だと疑ってた訳じゃない」 「政治家の言い訳かよ! みすみす3人目の犠牲者を出してしまった……!」 「どうもキミはボクに対するリスペクトが 著しく欠如しているようだ。 ミスター猪瀬が殺されるの可能性が高いのも、ボクは予見していた」 「えっ!? 本当に!? ……っていうか、だったら教えてよ!」 「ボクは蓋然性(がいぜんせい)合理主義だ。 犯人を泳がせつつ、今回の手口から黒幕を暴き、次なる事件を食い止める方が得策だと考えた」 「でも……猪瀬が死ぬなんて……。 遊び人だったけど、僕は友達だと思ってたんだ」 「彼の散華(さんげ)によって、犯人逮捕の(いしずえ)となるのだ。 No pain,no gainさ。 物事を得るには、時として痛みを伴う」 「うーん……虎穴に入らずんば……ってやつか。 よし、こうなったら猪瀬のためにも、一刻も早く 犯人を炙り出そう!」 「うむ、その意気だ! ワトソ……和兎村(わとむら)クン!」  ホームズ君は、爽やかな笑みを浮かべた。 「……で、ここが猪瀬氏の殺害現場か」  遺体があったオカ研の部室前は、警察の規制線が張られていた。  猪瀬の死体の形通り、チョーク・アウトラインが引かれている。  ホームズ君は、顎に手をやって つぶやいた。 「なるほど、今回の事件は密室殺人か……」 「いや、どう見ても密室じゃないよね? 廊下だよね、ここ?」 「ぱっと見、部室に入ろうとしたところを、背後から襲われた感じだな」 「でも聞いた話だと、猪瀬の遺体には怪我どころか、首を絞められた跡さえ残ってなかったみたいなんだ」 「でも死因は窒息……不可解だな。 何故彼はこんな所で呼吸ができなくなったんだ?」 「分からない……猪瀬が呼吸器系の病気を患っていたなんて聞いた事ないな」 「死亡推定時刻は?」 「14時間前……つまり昨日19時頃、僕達が部室を出た1時間後ぐらいに、ここで殺された」 「妙だな。 ミスター猪瀬は、皆と一緒に帰った筈だ。 何故彼はそんな時間に一人でここに居た?」 「分からない……放課後、オカ研のメンバーを集めてみる。 みんなから一通り話を聞こう」  山奥の、寂れた集落。  雪の降りしきる中、僕達は街にたった1軒のファミレスに集った。
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