第7話  God only knows

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第7話  God only knows

 ホームズ君と食堂へ行くと、チキン南蛮定食を手に持つ馬場に、ばったり会った。 「やぁお二人さん、奇遇だね。 一緒に昼食を取らない?」 「ああ、そうしよう」  僕はカレーうどん、ホームズ君はアジフライ定食を手に、馬場の正面に腰掛けた。 「で、ぶっちゃけミスター馬場は、誰が怪しいと思う?」  馬場は暫し考え込んだ後、ポツリとこぼした。 「僕は廃病院での肝試し……いや、やっぱり、芹沢 若菜の祟りだと思うな」 「HEYミスター馬場。 あまり野暮なことは言いたくないが、キミはオカルティズムが過ぎる」 「いや、ほ、ホント芹沢はヤバいんだって」  僕は切り出した。 「そういえば馬場は、しきりに芹沢さんの事を話題に出すね。 僕は1・2年とクラスが違ったから、よく知らないんだ。 自殺した芹沢 若菜という生徒について、教えてくれないか?」 「ウン……。 僕も噂で聞いた程度なんだけどさ。 芹沢さんは清楚でお(しと)やかだったけど、密かに付き合ってた男が居たようなんだ。 しかもその彼氏に酷い事されて、命を絶ったらしい」 「マジで……? 大人しそうな子だったから、驚いたな。 誰から聞いたんだ?」 「覚えてないや……。 僕も真相は知らないけど、芹沢さんの死後、まことしやかに囁かれてたんだ」 「へぇ……。 確か芹沢さんが自殺したのは、4月の初め頃だったかな」 「ウン。 オカルト研究部が設立される、少し前だったと思うよ」 「ふーむ……自殺した芹沢さんの、祟り……ねぇ……」  僕は半分聞き流しながらも、心のどこかに、芹沢 若菜という少女の自殺が 引っ掛かった。  昼食後ホームズ君と校庭を歩いていると、でっかい電動ドライバードリルを抱えた南野さんと出会った。  ホームズ君が声をかける。 「やぁ、ミス南野。 そんな物騒なモノを持って、何やってるんだい? 死体でも切断するつもりかな?」 「ちょっと、おっかない事 言わないでよね。 私オカ研と掛け持ちで、DIY部にも入ってるんだ。 だから休み時間に時々こうやって、木工品を作ってるのよ」  南野さんはそう言うと、木材に電動ドリルの先端を当てた。  僕は目の前にある南野さんの白い太ももから、思わず目を背けた。 「みっ、南野さんはさ。 一連の事件について、どう思う? 怖くない?」 「とても怖いわ。 でも私には、殺されるような心当たりは無いし、犯人にも全く見当が付かないの」  電動ドリルが勢いよく回転する。 心なしか、南野さんの顔は青ざめている気がする。 「僕が君を守るよ」  そう言いたくても言い出せない、自分のヘタレっぷりが心底憎い。  南野さんは分厚い木材に大きな穴を開けながら、ぽつりとつぶやく。 「何で猪瀬くんは、あんな時間に部室に行ったんだろう?」 「僕にも分からないな。 他のメンバーの話によると、1回帰宅してたんだよね? その後わざわざ部室に戻るなんて、余程の事情があったんだろうね」 「私悲しいよ……オカルト研究部を作ったのは私だしさ。 私のせいで、熊田くんも犬飼くんも、猪瀬くんも死んじゃったのかなって……」 「君が気に病む必要は無い。 それに大丈夫、僕達にはホームズ君がついてる」 「その人 本当に大丈夫なの? 全然解決に向かってる気がしないんだけど……」 「無礼な小娘だな。 あと数日もあれば、全ては白日の下になるだろう。 もし君が犯人なら、震えて眠れ」  ホームズ君は、無邪気に笑い飛ばした。
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