第8話  4度目の哀歌(エレジー)

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第8話  4度目の哀歌(エレジー)

 僕達が歩いていると、10mほど先に、虎杖(いたどり)の姿を見つけた。  虎杖は僕達の姿を認めると、鬼の形相でこちらに突っ走ってきた。 「えっ!? 何!? 虎杖!?」  虎杖は僕目掛けて、思いっ切り拳を振った。  パカァン!!!  鈍い炸裂音とともに、陶器や土が辺りに飛び散った。 「うわっ、何だこれ!? 何が起きた!?」  虎杖は右の拳を擦りながら、深い溜め息を漏らした。 「痛てて……向こうから歩いてきたら、お前等の頭上に植木鉢が降ってきてるのが見えてな。 間に合わないと見て、鉢を殴ったんだ。 ちょっと無謀だったな」  虎杖の拳は赤く腫れ上がっている。 ヒュウ♪とホームズ君が口笛を鳴らした。 「やるな、ミスター虎杖。 褒めて遣わす」 「何で上から言ってんだ! ゴメン虎杖、僕達のために……」 「フン。 弱小オカ研のメンバーがこれ以上減ったら、さすがに寂しいからな」 「虎杖……君がオカ研にそこまで思い入れを持ってるなんて、意外だったよ」 「最初は南野に誘われて、渋々入ったんだがな。 まぁ何だ。 案外お前等と過ごすのは悪くなくてよ。 こう見えても、今回の件はショックを受けてるんだぜ」 「そうだったのか。 拳は大丈夫か?」 「殴るのは慣れてるし、こんなの明日には治ってるぜ。 そんな事より、我が身の心配をしろ。 植木鉢が勝手に落ちたのか 誰かが落としたかまでは確認できなかったが、和兎村(わとむら)、お前もオカ研の一人なんだからな」 「分かった、ありがとう。 本当に助かったよ」  虎杖は右手をヒラヒラ動かすと、背を向けて去って行った。  ホームズ君が、小さく唸る。 「人は見かけによらないな。 ただのヤンキーと思ってたが、なかなかの善人じゃないか」 「そうだね」  僕は同意したものの、虎杖との会話の中に、何か違和感を覚えた。  そしてそれが、僕が虎杖を見た最後の姿となった。  翌日虎杖は、ひっそりと姿を消した。
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