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「これ! この手紙! 私の下駄箱に入ってたんだけど!」
「ん? ああ、うん」
「〝うん〟じゃないよ!! 二日連続で間違えるってどういう事!? 山崎くん、好きな人にちゃんと告白する気あるわけ!?」
「そりゃあるけど……え? 俺またなんか間違えてた?」
「間違いだらけだよ!! 山崎くん、古田さんに向けてラブレター書いたんでしょ? なのに間違えて私の下駄箱に入れてたの! 古田さんの下駄箱は私の左隣! もうっ、ちゃんと確認してよね!!」
「はっ!?」
山崎くんは慌てたように手紙を奪うと、自分の書いた文字を左から右に追う。
「……ホントだ……一本足りてない」
「は?」
呆然とした表情で呟くと、山崎くんはがっくりと肩を落とした。骨張った右手で目元を覆い、落ち込んだように深い溜息を吐き出す。いやいや、溜息つきたいのは私の方だから。昨日は手紙の間違いで今日は人の間違いだなんていい加減にしてほしい。しかもまた私が第一発見者だし! なにこれ呪い!?
「二日連続で間違えるとかありえないんですけど!!」
「ごめんごめん。でもさ、今回中身は間違えてなかったでしょ?」
「まぁ確かにね。でもさ、置く場所間違えたら元も子もないじゃん。せっかく成功したラブレターだったのに」
「……おっしゃる通りで」
「もう! 次は絶対間違えないでよね!!」
「……どうだろ。二度あることは三度あるって言うし、俺ちょっと自信ないわ」
「仏の顔も三度までだから!!」
「うわ、吉田さん厳しいなぁ」
ははっ、と笑った山崎くんと目が合う。彼はそのまま私に向かって宣言するように言った。
「大丈夫だよ。次は絶対間違えないようにするから」
「……ふーん」
「ほら、三度目の正直ってやつ?」
何故かドヤ顔をする彼に私は呆れたように口を開く。
「はいはい。今度は渡す前に指差し確認でもしたら? 最終チェックは重要だよ。じゃ、また明日」
下駄箱から引っ張り出した茶色のローファーを履いて、私は足早に校舎を後にする。日の沈みかけた薄暗い空を見上げると、山崎くんのやや右上がりの文字が浮かんできた。
……しかしまぁ、山崎くんの好きな人が古田さんだったなんて予想外だった。ギャル系より清純派がタイプかと思ってたんだけど……どうやら読みが外れたらしい。この際だから私もギャルにイメチェンしてみようかな? なーんて。
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