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三度目の正直は?
*
「失礼しましたー」
日誌を担任に渡して週番の仕事は無事終了。長かった雑用係とも今日でようやくおさらばだ。……そういえば、二回ともこの後に山崎くんの手紙を発見したんだよなぁ。
一日目は机の中、二日目は下駄箱。はてさて、三日目の今日はどこに置いたんだろう。また何か間違えてなきゃいいけど。
そんなことを思いながら帰り支度をしていたせいか、もしかしたら今日も手紙が入っているんじゃないかとロッカーや鞄を探してしまう自分がいた。空っぽの机を覗き込んで苦笑いを浮かべる。念のため下駄箱の中も確認するが、そこには茶色のローファーが二足、きちんと並んで入れられているだけだった。……まぁ、さすがに三回目はないか。昨日あれだけ宣言してたし。
手紙が入っていないと分かると嬉しいような寂しいような、なんとも言えない感情が胸の中に押し寄せた。
……まぁ、あれだ。山崎くんは無事古田さんに手紙を渡せたということなのだろう。良かった良かった。ま、古田さんでも私でもない、別の人の所に置いていなければの話だけどね。……うわ、なんかあり得そうで怖いな。
私は足取り重く歩き出す。見慣れてしまった白い封筒と右上がりの堅苦しい文字が、今はなんだか懐かしい。私がこんなにもあの手紙のことを気にしてしまうのは、二日連続で告白相手に間違えられたから。ただそれだけだ。それだけに……決まってる。
「吉田さん」
名前を呼ばれてくるりと振り向くと、校門前の壁に寄り掛かかってスマホを弄っている山崎くんが居た。耳に付けていたイヤフォンを外しながら、スタスタとこちらに近付いてくる。どうしてこんな所にいるんだろう。
「週番? お疲れ」
「あ、うん。山崎くんはここで何してるの?」
「ちょっと人を待ってたんだ」
あ、もしかして。古田さんのことを待ってるのかもしれない。なるほど、置き手紙作戦から直接渡す手法に切り替えたのか。その方が確実だしね。私はからかうような口調で言った。
「ラブレター、今日は私のとこに来てないから安心していいよ」
すると、山崎くんは当たり前だとばかりに頷く。
「そりゃ、まだ渡してないからね」
お、やっぱり。予想通り直接渡す手法に切り替えたらしい。いや、でもこんな所で待ち伏せってどうなの。なんかストーカーみたいじゃない? 山崎くんってどっかちょっとズレてるんだよなぁ……って、あれ? でも古田さんってもう帰ってなかったっけ? さっき下駄箱見た時、彼女の靴は上履きしかなかった気がする。えっ、じゃあここで待ってても会えるわけないじゃんタイミングわっる! 何? 今日は間違いじゃなくてすれ違い? 三度目の正直どこ行った!?
「あの、」
山崎くん、と続くはずだった私の言葉は喉の奥に引っ込んだ。
左手に白い封筒を持った彼が、右手の人差し指でその手紙をしっかりと指差しているのを目の当たりにしたからである。
……え、ちょ、何してんの?
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