初めての殺人

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「……あの、俺、やっぱ無理です。勘弁してください」 「ばっかやろう!てめえ、今更何言ってやがんだ!」 「だって……俺には無理ですよお、人殺しなんて出来ねえよ」 「甘ったれてんじゃねえよ!てめえのために飛び道具まで用意してやったんだぞ。なにも匕首構えて突っ込めって言ってんじゃねえんだ。楽なもんだろうが」 「だって、人殺しなんて、やだよお。相手からも恨まれるし……怖いよお」 「ふざけんな!」 「痛っ!」 「痛いか。痛いってことはてめえがまだ生きてるってこった。有難く思いな。もう、金貰っちまってるんじゃねえか。こんなとこまで来て、今更引き返せるかよ。さあ、これを持って。ばか、安全装置を外せ。早く!」 「……(ぐすん)……」 「どうだ。今の気分は」 「……人を、殺めちまった……」 「そうだ。お前はもう立派な人殺しだよ。もう、お前の手は汚れちまったんだ。引き返せないのさ。きひひひ」 「俺は、人殺しになっちまったんだ……」 「ああ、そうさ。これでお前も立派な人殺しだ。だが、一つだけ覚えておけ。あいつも俺らと同じ鉄砲玉だったんだ。お前が先に撃たなきゃ、今頃お前の方が死んでたんだぞ。お前、長生きしたくねえのか?」 「……」 「まあ、今日はゆっくり休んでいいぞ。俺もそうだった。初めて人を殺した時は、さすがにキツイよな」 「……すんません……」 「よお、どうだ。調子は」 「いや、この銃、本当に相性がいいっすよ。手にぴったりなじんでくる感じ、てか銃の方から吸い付いてくるような感じっすね。おかげで撃つのが楽しくて楽しくて」 「そうか、そうか。いいねえ。ただ、あんまり無駄玉撃つんじゃねえぞ。弾もただじゃねえんだからな」 「わかってますって。ちゃんとじっくり狙って撃ってますよ。ああ、早く一流のスナイパーとか呼ばれるようになりてえな」 「はは、なかなか頼もしいじゃねえか」 2月27日の状況です。ユフレインに侵入したルシケ軍侵略部隊と同国国防隊の間では、今日も首都キョウフを中心に各地で激しい戦闘が続いており、双方に多数の死傷者が出ているもようです。この事態に国連安全保障理事会は…… [了]
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