いたちごっこ

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「あった!あったぞ!遂に見つけた!」 部下のひとりが声をあげた。 「本当か!ここまで長い道のりだったな...ここからどれくらいだ?」 「2日程で到着します!」 未だ興奮止まないといった口調。それもそのはずだ。私たちは地球を発ってから80年ほど経過している。コールドスリープのお陰で殆ど歳は取らなかったが、地球の命運がかかった旅なのだ。 何しろ地球では金の減少が著しかったのだ。最新技術のあれこれに純金は欠かせなかった。しかし、その金は時と共に減少していき文明維持が難しくなる程だった。 そこで編成されたのが我々だ。遠く離れた星に純金で出来たものが見つかったのだ。苦節80年の成果がもう目と鼻の先にある。興奮するのも無理はない。2日後、純金の星は眼前いっぱいに広がっていた。 「何とうっとりする景色だ。こんなに沢山の純金が...早く地球の連中に持って帰ってあげましょう!」 私たちは貨物用シャトルに限度量いっぱい金を載せると早速地球への帰路へ着いた。地球のみなが喜ぶさまを想像しながら急速冷凍機へ身を沈めた... 80年経過した頃コールドスリープから覚め、地球が眼前に広がっていた。「やや、何かおかしいぞ...」隊員の1人が呟く。確かにおかしい。あまりに繁栄し過ぎているのだ。立ち並ぶキラキラしたビル群、空飛ぶ車。出発する時はギリギリの状況で私たちを送り出したはずだったのだが... 地上に着くと小太りの男に迎えられた。 「はるばるの旅路お疲れ様で御座いました。祖父から聴いております。実はあなた方が旅立って数年程で金の代わりにダイヤモンドが導入され、ここまでの発展にこぎつけたのです。つまり金はもう不必要となった訳でして、あなた方の持って来てくだすった金も不要となってしまったのです。しかし、現在ダイヤモンドも急速に減少しておりまして....。そこでなのですが、実は遠方にダイヤモンドで出来た星が観測されまして...」
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