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大学の掲示板
ある日、掲示板を見ていたら謎の張り紙があった。A4サイズの印刷用紙に鉛筆で薄く文字が書かれていた。
「なんだこれ?」
普段よく掲示板を見ているが、これほどまでに雑な張り紙を見たことが無かった。どれほどデザインに無頓着であろうと、せめてはっきりとした文字で書くべきではないのかと思った。しかしながら気になるのは事実なので、顔を近づけて文章を読んでみることにした。
「親愛なるあなたにこんにちは。
私は零人称視点でこの文章を書いています。
この張り紙を見ているあなたには、
私なりの視点から伝えたい事がございますので、
ぜひともB塔11階の1116号室に授業終了後来ていただきますよう
よろしくお願いします。
零人称から、今日も良い日を願って」
1116号室は私にとってなじみ深い場所だ。スペイン語をそこで受けているのだが、実は1コマ前の時間帯は空き教室となっているので、時間をつぶす相手がいない私はそこで1時間以上ボケーっと座って待っている。別に大学内に友達がいない訳ではないのだが、みんなその時には授業があるので結果的に誰もそばにいない。基本教室内では、弁当を食べて、音楽を聴いて、窓から見える景色を見て、寝る。何も起こりはしないし変わりもしない。そんな学生生活を送るはずだったのに一体こいつは何者なんだ。
「ねえ、なんか変なことしてるよ」
「え、なに?」
後ろで女子学生のグループがひそひそと話しているのが聞こえた。間違いなく私のことだ。まあいい、とりあえず無視してしまおうと思ったら、グループの一員と思わしき学生がこう言った。
「あー確かに。何もないのにね」
何もない? いや、そんなはずはない。確かにあるのだ、零人称からの手紙が。反論しようと思ったらすでに彼女たちは下りのエスカレーターに乗っていた。派手に染まった髪の毛と、化粧が施された学生は別の話題で盛り上がっていた。私はとりあえず張り紙を写真で撮ってフォルダに保存した。
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