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今日は必修科目がある日だ。つまり1116号室に行かなければならない。本当はすでにあそこで弁当を食べているはずだが、怖くて行けなかった。代わりに、キャンパス近くにある風がよく通るベンチに座って昼を過ごすことにした。この場所は楓テラスといって1階はベンチが並び、2階はおしゃれな飲食店が入っている。なぜ楓なのかは知らない。所有者の下の名前がそうなのかもしれない。
しかし、弁当を食べ終わってしまったらずっとベンチに座っているのもつまらなくなってしまった。かといって、スマホをいじりすぎて電池が切れたら問題だ。
「よし、歩くか」
私は立ち上がって感覚で周辺をふらつくことにした。1時間かけて色んなものを見た。神社、ビル群、洋菓子店、ドラックストア、公園...。いままで行ったことも無い場所に行っては、ほうこんなものがあったのかと思い少しばかり見つめる。途中で幾多の人を見て、そのたびにもしも自分がこの人たちと仲が良かったらと空想した。もしもここの高校に通っていたら、そう思って視界に入った石畳の階段の方へ歩いて行った。
多分私は違う学生生活を送りたがっているのだろう。階段を上りながらずっとifの話を考えている。別に過去が変わらなくたって、今ここで衝撃的な出会いを果たして人生が思いっきり変わるかななんて願いながら散歩をしているのだ。でもそんなこと起こるはずはなかった。上り終えて私はそびえたつB塔を眺めていた。
「さあ、戻るか」
私は残りの授業を受けるためにキャンパスへと戻った。
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