てっていてきにざまぁを 5

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てっていてきにざまぁを 5

「アリサ、事情はすでに息子からきいている。きみの懸念も承知している。将来、次期国王の正妃として国民や諸外国の貴人たちの前に立つことになる。きみは、もっと自分に自信を持つ必要がある。アリサ。きみは、自分で思っている以上に美しい。きみの火傷の跡のことをとやかく思ったり言ったりする愚かな輩に勝てるだけの、強い心を持ってほしい。いや、それはすでに持っているはずかな?親バカにきこえるだろうが、息子はわたしよりはるかに良き国王になれる。きみには、その息子を支えてやってほしい。聡明で献身的なきみなら、それができるはずだ。アリサ、わたしには娘がいない。ぜひ、わたしに娘を得る喜びをあたえてほしい」  国王陛下は、やさしい笑顔で頭を下げた。  こんなわたしに……。 「本当に、本当にこんな顔のわたしで……」 「アリサ、あなたもじれったいわね。顔なんて、白粉でどうとでも隠せるでしょう?これを機に、あなたも一歩踏み出しなさい。殻に閉じこもっているだけじゃなく、広い世界を見なさい。陛下のおっしゃる通り、自分に自信を持ちなさい。だって、こんなにあなたを一途に愛してくれている人がいるのよ。それは、あなた自身がすばらしいからでしょう?」 「ソフィア……」 「アリサ、父上とソフィアの言う通りだ。そのドレス、よく似合っている。美しさで目が眩んでしまうよ。わたしがソフィアに頼み、あつらえてもらったんだ。気に入ってくれているといいんだけど。アリサ、かならずしあわせにする。他国の図書館にも連れてゆく。だから、わたしの願いをきき届けてほしい」  ギュッと抱きしめられた。  迷う必要なんてない。これからは、何を言われても気にしない、顔のことを気にしないだけの強さを持たなければならない。  いいえ。それ以前に、自分の想いに従うだけの強さを持たなければならない。  愛する人に「愛している」、と伝えられるだけの強さを持たなければならない。 「お受けします。わたしも殿下のことを愛しています」  大広間は、しばらくの間歓声に包まれた。
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