てっていてきにざまぁを 1

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てっていてきにざまぁを 1

「理由ですが、これをご覧ください」  彼がちかづいてきた。すると、うつむきかたまったままのわたしの左半面をおおう髪を、ぐいっとつかんだ。 「……。ははっ、白粉でうまく隠したじゃないか」  彼は、ささやくように言った。 「今はうまく隠していますが、彼女の左半面は火傷の跡があって醜いのです。ほら、ご覧ください」  彼は、髪をつかんでいない方の手でわたしの左半面を荒っぽくこすった。  あまりの暴挙に抵抗もできない。  白粉がとれてゆくにつれ、周囲の人々が息をのんだりうめき声をあげたりするのがわかる。 「このような容姿だと、将来、公爵の妻として公式の場にだすこともできません。ですので、今宵かぎりで婚約を破棄し、あらたな婚約をいたします。その相手は……」  彼は、わたしの髪から手をはなすとソフィアに近づいていった。 「ソフィア・ティーカネン侯爵令嬢です。彼女とは幼馴染です。夫婦になるべくしてなる、といったところでしょうか。さぁソフィア、こちらへおいで」  ガブリエルがソフィアに手を差し伸べた。  が、彼女はその手をとることはなく、わたしに近づいてくるとわたしの肩を抱いた。 「ああ、アリサ。ごめんなさい。わたしを許して。まさかこのクズが、あなたにここまでひどい仕打ちをするなんて思ってもいなかったわ」  彼女は、わたしを抱き寄せて言った。  それから、わたしを胸元から解放すると、ガブリエルに向き直った。  こんなときなのに、彼女の胸がかなり豊満なことに気がついた。  この淡いピンクのドレスは、貧弱なわたしの胸にぴったり合っている。  ということは、このドレスは彼女のお下がりなんかじゃない。  もともと、わたしのためにあつらえられた物なのだ。 「お断りよ、このクズ」  ガブリエルにたいしての彼女の第一声が、それだった。 「な、なんだって?」 「あなた、頭や性根だけじゃなく、耳まで悪いの?」 「ソフィア、いったい何を言って……」 「このクズ野郎!あ、乱暴な言葉で申し訳ありません」  彼女は周囲の人々に謝罪をしてから、また口を開いた。 「だれがあなたの婚約者になどなるものですか。言っておきますけど、わたしだけじゃない。この国の貴族令嬢であなたと婚約をしようなどという人はいないわよ」 「はあああ?ど、どういうこと……」 「まず、あなたはクズよ。とんだ勘違い野郎だし、バカで愚かだわ。ムカつきすぎてめまいがしてしまう。それから、アリサをひどい目に合わせてきた。彼女がやさしくておとなしいのをいいことに、散々傷つけてきた。彼女にもっといい男性がいるわよってどれだけ言っても、彼女はあなたがいるからときいてくれなかった。彼女は、あなたを傷つけたくなかったからよ。もっとも、あなたは傷つくような性根じゃないでしょうけどね。そして、一番むかつくのは、彼女の火傷の跡のことよ。すべてあなたのせいじゃない。よくも抜け抜けとあんなことが言えるわね」  彼女は、ひた隠しにしていた火傷を負った理由を語った。
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