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21.迷子なう
さっそく週末、俺はエリナの後を付けた。
後を付けたのだが……同行しているエマがやたらと警戒しているので近くには行けない。
エマは普段、侍女として俺の付き人しているんだけど、魔法の授業や剣の訓練を俺と一緒に受けている。
物理的にもクランベル家と俺を守るんだと。何とも頼もしい。
しかし今回はそれが仇になった。
剣の師匠である、冒険者のアドル先生から感知スキルとか警戒スキルとかを習得しているため……。
ザッ
「ん? 今、ルーク様の気配がしたような?」
(うお⁉)
二百メートルくらい離れているのに、足音を捉えて後ろを振り向きやがる。
しかも俺と判別するとか、もう、あれメイドじゃなくて忍者だよ。忍者イドだよ。
戦闘に関しては、まともにエマとやり合えば俺が勝つのだが、暗闇の中や障害物が有ると俺の勝率は大きく下がる。
と、そんな事を考えていたら二人を見失っちゃったよ。
近くを探しても見つからない。
「はあ~ 仕方ない。諦めて帰るか」
……。
…………。
「ここ、どこだ?」
………。
「やべぇ……クランベル領を出てから結構経つってのに周囲を全く気にしてなかった。完璧に迷子になってしまったぞ」
焦って動いた結果、俺は見知らぬ土地で迷いに迷いまくった。
そして、三時間ほど馬に乗って歩き続けた時だった。
歩いている道の向こう側に、十歳行くか行かないくらいの男の子が、よたつきながら歩いているのが見えた。
なんだありゃ、絶対ただ事じゃないぞ。
嫌な予感がする。怪我をしているのか?
ヒヒーンと、急いで馬を走らせる。
「なっ⁉」
近付いてみると、俺の嫌な予感が当たっていたることがわかった。
男の子は怪我をしていて、腕には幼い女の子を抱えていた。
「おい! 大丈夫か⁉」
俺は男の子を木陰に連れて行き、水を飲ませてから回復魔法をかけた。
「話せるか?」
「う、うん。ありがとう。あ、ああ……お姉ちゃんとレナねえちゃんが‼」
「どうした、落ち着け」
「お姉ちゃんとレナ姉ちゃんが恐い大人の人に攫われたんだ! 僕とナナだけはレナねーちゃんが魔法で庇って逃がしてくれたんだ!」
男の子は錯乱状態で、上手く会話をすることが出来なくなっている。
だが、今の言葉だけで十分だ。
「君のお姉さんたちは僕に任せてくれ。君は僕が乗って来た馬で近くの村か街の警務所(交番みたいな場所)に助けを呼びに行ってもらえるかい? なに、この馬はしっかり調教されている。君を振り落としたりなんかしないさ。いいね」
男の子が力強く頷くと、俺は強化魔法を自分の体に施し、駆けた。
広い野道を、持てる限りの力を使って。
結果……更に迷子になった。
「しまった! 場所を聞くのを忘れた‼ というか、お姉さんたちの特徴も怖い大人たちとやらの特徴も何一つ聞いてない⁉」
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