19.襲来

1/1
前へ
/22ページ
次へ

19.襲来

「ふう、これでやっとリンゴの収穫も半分終わったわね」 「うんうん、ありがとねレナ。あなたが来てくれたおかげよ。私たちだけだったらあと三日はかかってたよ」 「ほんとだよ。レナねーちゃん、最初はどっかの貴族様みたいでミミズも触れなかったのに、今じゃモグラも蛇も平気になったもんな」 「こら!」  ゴツン! 「いて!」 「どうでもいいこと言ってないで、ライからもレナにお礼を言いなさい!」 「うう……ありがとうレナねーちゃん」 「フフ、いいえ」    今、このリンゴ園にいるのは、レナことエリナと、エリナの友人であり、雇い主であるリーシャと、リーシャの弟であるライ、そして二歳になる妹、ナナである。  リンゴの収穫を半分終え、三人は休憩に入ろうとしていた。 「でも、ライの言うことも間違っていないわ。確かに私は世間を知らなかった。最初は手伝うどころか、随分と足を引っ張ってしまったもの。むしろお礼を言いたいのは私の方、有難うリーシャ、ライ。私に色々と勉強をさせてくれて」 「もう、またそういう難しいことを言う。何の勉強か今一わからないけど、そんな事気にしなくていいのよ。私たちは今レナのおかげで助かってる。それでいいの」 「はい、その通りですね。リーシャ先生」 「レナったら!」 「フフ」 「よし、じゃあ一旦お茶にしましょ。ライ、お茶を取って来るからナナをお願いね」 「いいよねーちゃん。俺が取りに行くから」 「そう? じゃあお願いね」 「ほーい」   そう言って、ライはその場から離れた。 「ねぇレナ、いつか本当のレナの事を教えてね」 「ええ、いつか必ず教えます。私が自分に自信を持てたその時に」  しばし談笑をする二人であったが、ライの帰りが遅く、どうしたのだろうと気になった時、二人の目の前に、見るからに怪しい刃物を持った数人の大人たちが姿を現した。 「へへ、こりゃガキにしては上玉だ。高く売れそうだぜ」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加