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私はお前のライバル
「色使いが良い」
「ちゃんと奥行きがある」
先生からお前が一番たくさんお褒めの言葉があって、その次の私は
「ここ、もっと色を考えて」
「パースとデッサンをもう一度」
一番たくさんお直しの言葉を言われた。
お前が言った通り、こんなにも違った。
「なあ、そこの君」
気が重い授業が終わって提出した絵を持ち帰ろうとしたときお前に声をかけられた。周りの目線が私とお前に集まる。何を言われるのか怖かった。厳しい先生に認められている天才であるだからきっときついことを言われるそう思っていた。
「俺のライバルになってくれませんか」
「はい?」
最初わけがわからなかったよ。何言ってんのこいつとおもった。
「君の絵は俺のとは違う。けどそこがいいなと思った」
いいなと思った?お前は天才だろう。先生も、めちゃくちゃ褒めていたしなんなら私からみても整った絵を書くと思うのに。
「君とライバルになれたらなんだかもっといい物が書けそうなんだ」
「お、お断りします」
断ったんだよ最初は、天才と名高いお前と名無し同然の私、ライバルなんて荷が重い関係性を今まで話したことが無かったのにいきなり押し付けてくるな。
しかしそれ以来、お前は私をライバルと呼んでついてくる様になった。食堂に行けば同じテーブルの向かいに座り、自由席の授業であれば、近くに座る。そしてたまにライバルになれとたまに話しかけてくる。その結果根負けした。ただし、ライバルにはならなかった。私はお前に言った。
「ライバルと呼ぶ、呼ばれるにはお互いのことを知らないから、まずは友達から始めよう」
それでどうにかライバル呼ばわりをやめてくれた。しかし前以上についてくるようになった。
たまに同じ題材で描けばお前のライバルと呼ばれるのではと期待した人たちが真似してくる様になったがお前は一切の関心を持たないでずっと私の絵の隣に自分の絵を置いて奇妙な儀式を繰り返した。
天才のお前に近づきたい人はいっぱいいるが、お前がライバルと呼んだのは私一人。私はお前のライバルとして有名になってしまった。
その内に最初の課題作が学生新聞に載った。見出しには
「正反対のライバル」
と書かれていた。
お前は夜の冷たさが無機質に残る感じ。私は朝の温かさが眠っている感じというのが記事の内容だったと思う。
お前は卒業した今も大事に持っているの知っているからな。
卒業するかしないかぐらいだったなあ。お前のことをライバルと呼んだ時すごく恥ずかしかった。これからもずっとお互いがじじいになるまで、呼び合ってやるつもりでいたのだけれどなあ。
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